2011 年 11 月 24 日 に投稿されました。内容が現状と相違がある点等にご注意願います。
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読了した書籍〜「采配」

今回はコナミ日本シリーズ 2011 終了とともに退任した落合博満前監督著「采配

落合 さんが監督に就任後は、30 年近く見続けている中日ドラゴンズの歴史の中でも間違いなく最強であった 8 年間だった。
以前の投稿でも書いたが「戦略が見える野球」「雑ではない野球」と感じていたこの期間、落合 さんがどう考えていたのかを知りたくて手に取った。

ビジネス書としても通用する様に各項目に一般社会について言及している部分があるが、野球を知らずとも読めば容易に自分のことに置き換えることができ、少々冗長な印象を受けたので、ここでは指揮に直結しそうな部分のみを取り上げる。

せっかく若くしてレギュラーになっても、30 代半ばでユニフォームを脱ぐことになったら寂しい。20 代で足場を固め、30 歳でレギュラーの座を手に入れ、40 代まで第一線でプレーできたほうが幸せなのではないだろうか。
第 1 章「自分で育つ人」になる「30 代で何をするかで、40 代が決まる」

ここにやみくもに若手を使わない起用法が見える。
以前、高校卒業後 1 年目にレギュラーとなった立浪和義 さんに関しても体をつくってからの出場であれば、もっと長く選手生活を送れたという様なことを言っていたとを思い出す。
後述されるオールスターゲームでの起用法、ワールド・ベースボール・クラシック (WBC) への対応は、野球選手という個人事業主をいかに尊重しているかがうかがえる内容。

繰り返すが、試合は「1 点を守り抜くか、相手を『0』にすれば負けない」のだ。
第 2 章 勝つということ「「負けない努力」が勝ちにつながる」

投手を中心にして勝つということが一貫してぶれない 8 年間だった。
三冠王を 3 度も獲得した落合 さんだからこそ打線が水ものであることを痛感していたのだろう。
胃が痛くなる様な試合展開が多くあったが、ここに僕は「勝つ野球」を教えてもらったと思っている。

それでも、毎年何人かの選手には戦力外通告をしなければならない。だからこそ私は 12 球団どこに行っても戦力と考えてもらえる力をつけさせたいと考えている。
第 3 章 どうやって才能を育て、伸ばすのか「基本はリストラではなく、今いる選手をどう鍛えるか」

「適材適所」を球団内のみならず、他球団で活躍できるかということまで考えている。
本書にもあるが、首位打者を獲得した東北楽天イーグルスの土谷鉄平選手が良い例だろう。中日では争いに敗れはしたが、すばらしい選手。
個人的に良かったと思っているトレードは横浜ベイスターズの小池正晃選手と石井裕也投手。石井投手はさらに北海道日本ハムに移籍したが、今年は 39 試合に登板、防御率 1.31 という数字を残している。
民主党の皆さんも国会で「適材適所」について攻め込まれる前に本書を読むと良い。

実は、山本や川上は練習させるために呼んだのではない。ゆっくり過ごしてくれればいいと思っていたのだ。ただ、名古屋に残っているとテレビ出演が立て込んだり、後援会の集まりにも顔を出さなければならない。
第 4 章 本物のリーダーとは「監督は嫌われ役でいい。嫌われ役がいい」

これは 2004 年の日本シリーズ終了後、本来は休みであるベテランを秋季キャンプに呼んだ際のことだが、本当に選手を守ることを考えているということが前章までに引き続き感じられる。
こういった姿勢が一部から聞こえてくる様に反感を買ったのかもしれないが、秘密主義でも何でもなく、すべては勝つことによっていかに選手とその家族を守るかということだったのだと思う。

毎試合勝ちに行く。こういう戦いを続けていると選手は確実に疲弊してしまう。そして、その疲れは翌日の試合にも大きく影響するのだ。
第 5 章 常勝チームの作り方「連戦連勝を目指すより、どこにチャンスを残して負けるか」

まさにこれが落合 さんの監督としての戦い方だろう。
こうした戦いを続けていたのでファンで、ある僕も自然と分かってきた「今日は負け試合だな」と。
目標はまずセントラルリーグでの優勝であり、すべての試合に勝つことが不可能な以上、正しい選択であると思う。
ここに関しても賛否両論があるだろうが、明治神宮球場での観戦試合が負けっぱなしの僕は気にしていない (笑)
負け試合でも見る場面は十分にあることが多いし、何よりも秋に笑うことが大切。
「野球の見方」を教えてもらった部分。

現役時代に残した数字で私を上回っている者は、ドラゴンズには誰もいない。ならば、私が提示する考え方でやってもらうしかない。
自慢でも強権発動でもない。あくまで「監督のやり方」に納得してもらうための「方便」である。
第 6 章 次世代リーダーの見つけ方、育て方「監督の仕事は、選手ではなくコーチの指導」

情報がない、分からないと言われていたこの 8 年間でだったが、落合 さんが 1 番うまくマスコミをはじめとするメディアを操作していたのではないかと思う。
監督であるからこその監督としての立ち振る舞い、例え相手が野村克也 さんでも発言にぶれがなかった。

各章から宣伝されなさそうな太字以外の部分をできる限り引用したが、この 8 年間が楽しかった方には非常に興味深いでしょう。

落合博満 さんという方の考え方が詰まった一冊。
改めて、落合 さん、ありがとう。
最後にもう一つ引用する。

だが、チームを預かる立場になって強く感じてきたのは、勝った負けたという結果よりも、大切なのは選手たちを迷子にしないことなのだということ。
第 6 章 次世代リーダーの見つけ方、育て方「引き継ぎは一切しない」

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