「選択の科学」は原題が「The Art of Choosing」なので、科学とは言っても人文系の科学、もしくは行動学と言った方が正しいだろうか。
題名と考えると、常に選択に迫られているというよりも、僕らは選択しながら生活しているので、そういった点に着目すべき。
シーク教徒の両親の元に育った著者シーナ・アイエンガーがアメリカの公立学校に通ったことから「選択」ということが始まるが、宗教に限って言えば日本人は逆の「選択」をたどる方が多いと思うので、こういった点からもまず興味深いものがある。
「コロンビア大学 ビジネススクール 特別講義」の内容なので、当然だが、講義という部分を強調する結果となっていることは否めない気がする。
ただ、序章からの著者の「選択」に対する読みものととらえれば、ひとつひとつがつながる。
マーケティングに関する書は「選択を放棄させることを考える」ものが多いと思う。
第 7 講に「選択を放棄することを考える」とあり、第 6 講「豊富な選択は必ずしも利益にならない」とある様に結論として「選択」を指南する書籍ではない。
マーケティングをなりわいにしている方にすると物足りないかもしれないし、少々、強引な解釈も見える。
僕はジャズが好きだが、ウィントン・マルサリスの言葉が引用されている。
ジャズにも制約が必要だ。制約がなければ、だれにだって即興演奏はできるが、それはジャズじゃない。ジャズには制約がつきものだ。そうでなきゃ、ただの騒音になってしまう。
「選択」を「Art」としてとらえると、この書籍が、今読みたい書籍なのかどうかの「選択」ができるのではないだろうか。
自分が「選択」する際に読んでおいて悪いものでもないと思うし、マーケティングや啓発一辺倒の書籍と比較すれば圧倒的に良書と感じた。