すっかり久々の投稿だが「これは、書いておこう !」と思う本「男のパスタ道」に出会った。
仕事柄、昼食は自分でつくることがほとんどで、ペペロンチーノはその手間からも忙しい中で重宝する料理の一つ。
妻に褒められる程度のできにはなったが、この本を手に取らずにはいられなかった。
帯に「ペペロンチーノの解説だけで 1 冊かかりました」とある様に、おいしいペペロンチーノにたどりつくためだけの 238 ページ、一時期話題になった「ゆで汁に塩を入れないでパスタを茹でるとどうなるか」という投稿を書いた土屋 敦 さんの著書。
レシピ本といえばレシピ本ではあるが、美しい料理写真は一切なく、パスタ選びから塩、一つ一つの作業をアホらしい (褒め言葉) までの姿勢で探求をする、実に深いペペロンチーノのための本。
例えば以下の一文にも表れていると思う。
私は「アルデンテとは、パスタの中心部にある含水率 40 パーセント以下のデンプンに由来する硬い食感」と定義したい。
最初からデュラム・セモリナからグルテンとデンプンを取り出したりと全体を通して興味深いのだが、目からうろこが落ちる様な、何気なくそうしていた部分にも切り込んでいる。
あまり核心に迫ってしまうと読む楽しみが減るので、中盤まででいくつか挙げる。
- 糊化は塩に比例しない
- 塩は沸騰してから入れる ?
- 岩塩を使う意味はない
- なぜゆで時間に神経質でないのか
特に「なぜゆで時間に神経質でないのか」の前後ではバリラのパスタを例に挙げて、テフロンダイスと高温乾燥、ブロンズダイスと低温乾燥という製法から現代的パスタの優秀性にまで言及をしている。
ただ、科学的でありながら自宅の台所での調理、家族での検証方法を用いているので、本格的な科学かというとそうではないが、そこは料理、食べる人間の感覚が必要なもの。
ここが小難しくさせず、試してみようという気にさせる。
まずは最後にいくつかあるレシピの中から「休日ペペロン」を試して、そこから僕も探求してみようと思う。
料理をつくる際は感覚よりもその意味することに対する理解だと思っていたので、一つ、良書に巡り会えたことになる。
本書の中で少しだけ触れられている「マギー キッチンサイエンス」も読んでみなくてはならない。
また、著者の新たな実験、発見による新しいレシピは「キッチン仮説」で随時更新されていくとのこと。
まだつくっていないが、既に頭の中はペペロンチーノでいっぱい。